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2016/08/25

消費税増税は延期ではなく中止を

Tweet ThisSend to Facebook | by kawahara

消費税増税は延期ではなく中止を


2 度目増税見送り

 6 月 1 日、安倍首相は平成 29 年 4 月に予定され ていた消費税の 10%への引き上げを 2 年半後の 31 年 10 月に延期することを表明しました。その理由 は「世界経済が大きなリスクに直面しており」、「消 費税の引き上げは内需を腰折れさせかねないから」 としています。
 増税延期は 2 度目で、1 度目は平成 26 年 11 月、 10%への引き上げを当初予定の 27 年 10 月から 29 年4月まで 1 年半延期し、その直後に「国民の審判 を問う」と衆院を解散しました。1 回目の延期後、 首相は、リーマン・ショック級や大震災級の事態が 発生しない限り、増税を予定通り実施する考えを示 していました。安倍首相は「世界経済の危機」を延 期の理由にしましたが、中国経済の減速や英国の EU 離脱問題などはあるものの、いまのところ「危 機」という状況ではありません。直後におこなわれ た参議院選挙対策の面もありますが、本当の理由は 「外」ではなく「内」にあります。
 「内」とは国内消費の低迷です。総務省の家計調 査では消費支出(実質・2 人以上世帯)で平成 25 年は- 2.9%、26 年は- 2.3%、今年に入っても 4 月- 6 月の 4 半期で- 1.2%となっています。低迷 の最も大きな要因は、実質所得の減少です。とくに 労働者の実質賃金は昨年まで 4 年連続でマイナスを 記録しています。この間、雇用者数は増加しました が増えたのは非正規で、消費を増やす余裕はありま せん。

頓挫したアベノミクス

 アベノミクスが描いたシナリオは、金融緩和と円 安によって企業収益を増やし、その波及効果で所得 を増やして消費を活性化させるというものです。し かし、この間、大企業の利益が史上空前を更新する 一方、消費は低迷、格差の拡大が鮮明になり、シナ リオは頓挫しました。また、格差拡大が社会の不公 平感、閉塞感を生み出しています。
 企業のおこぼれを家計にではなく、まず家計が富 むことで消費を活性化し、企業、地域経済に波及さ せていく、アベノミクスとは逆ですが、めざすべき はこの方向です。
 消費低迷の背景には、所得の減少と同時に将来不 安の高まりがあります。年金、医療、介護など社会 保障の分野で負担増、給付の引き下げなどがすすめ られてきました。家計の富を増やしていくためには、 実質所得を増やすとともに将来不安を払拭していく ことが必要です。

公正を実現する税制を

 消費税の最大の問題は「逆累進性」です。所得が 低いほど消費割合は高く、消費税の負担割合が高く なります。消費税増税は確実に消費不振をもたらす、 安倍首相もこの点を理解しているからこそ「世界経 済」にかこつけて延期したのでしょう。
 家計が富むためにも、消費税増税は延期ではなく 中止すべきです。そして格差を是正し、社会保障を 充実させる政策とそれを実現する財源が必要です。 現政権は企業減税を先行させるなどあくまでも企業 を富ませる政策に固執していますが、大企業・富裕 層優遇などこの間の税制改正は社会的公正を著しく 傷つけ、財政危機をもたらしました。いま必要なの は企業減税ではなく、所得税等の所得の再分配機能 を再構成・強化し、また富裕層の課税を強化して法 人の過度な利益に適正に課税することです。また企 業や富裕層の租税回避地となっているタックスヘイ ブンへの対応に、国際的な協力体制を構築すること が必要です。(川原徹)

(2016年8月)


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