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2016/04/20

誰もが生き生き過ごせる老後を目指して 介護の現場から

Tweet ThisSend to Facebook | by kawahara

誰もが生き生き過ごせる老後を目指して

介護の現場から

おおさかヘルスコープ 田島ケアプランセンター
柴山章子さん(ケアマネージャー)に聞く

 5月は介護保険減免の更新月です。関中協事務局 へ介護保険を利用する会員の皆様から様々な相談 が持ち込まれます。日夜、介護の現場でお年寄り に寄り添った活動をしている関中協の会員でもあ るヘルスコープ田島診療所、田島ケアプランセン ターふれあいを訪問しました。ケアマネージャーの 柴山さんに、介護の現場で起こっていることや、ど のような取り組みをしているのかをお聞きしました。

利用しにくい介護保険

 生野区は高齢化が進み、1人暮らしのお年寄りが 非常に多く住んでいるところです。最近、老人が 老人を、認知症の人が認知症の人を介護する、老 老介護、認認介護が増えています。(表1参照))
 介護が欠かせないお年寄りが増え続ける一方、 現行の介護保険は非常に不十分な制度になってい ます。例えば、大阪市の介護保険料は全国1 、2の 高さです。加えて、介護保険を利用する際、支払 う保険料は2015年度から家族の所得合計160万円 以上あれば利用料が10% から20%、2倍へと引き 上がりました。そのことから、施設は介護保険利 用者の預金について調査するようになりました。
 さらに、要支援1 、要支援2を介護保険から外し、 特別養護老人ホーム(以下、特養)入所は介護3か らを基準とされました。保険者から施設へ入る報 酬が改悪され、収入減によりつぶれる介護事業所 が出てきています。国は5年ごと、大阪市は3年ご とに制度の見直しを行いますが、見直しごとに悪 くなっています。

生野区の高齢者と生活保護者数

生野区ホームページより
生野区の人口全体130,482 -
65歳以上   40,589 31.10%
75歳以上   20,859 15.90%
生活保護受給     9,361 7.10%

介護保険改正の沿革

改正等
2000年 介護保険法施行
2005年 要支援1、要支援2軽度制度を導入し介護費用削減のため予防重視へ移行
2007年 特別養護老人ホーム入居へ食事負担、居住負担を導入
2008年 後期高齢者医療保険制度施行
2009年 介護度認定基準改悪。
2012年 地域包括ケアシステム導入
2013年 生活支援単位を1時間半から1時間に切り下げ
2015年 要支援1・2を介護保険から外す。特養入居基準を要介護3からとする。保険料の所得基準化

介護現場の実態

 生野区では介護施設が少なく、特に特養が不足 しています。一ヶ月5万~ 8万ほどで入れる特養が あっても、介護認定3以上でないと入所が難しい。 一ヶ月15万円~ 20万円かかる有料の介護付き高齢 者住宅はありますが、入居できるのは限られた人 です。下流老人という言葉があるように、お年寄 りが在宅で過ごせなくなった時、行き場がないと いう事態へ追いやられていっていると思います。
 例えば89才になる共働きの息子夫婦と暮らす A さんは日中独居の人です。食事、薬の服用など日 常生活全般に見守り、指示が必要です。これまで 週3回デイサービスを利用して、楽しく元気に過ご してきました。しかし、昨年から利用料が20% へ 引き上がり、経済的な事情で週1回のデイサービス 利用となりました。特養に入所しようにも、介護 度2であるため入所できず、日中は1人ベッドで過 ごすことが多くなっています。
 一方、介護をする職員も大変なことになってい ます。介護報酬が切り下げられ、職員を増やすこ とできません。介護職員は給与が低く仕事がきつ いというのが慢性化しています。各地で起こって いる介護現場のトラブル、事故の起こる要因が、 働き続けたくとも、生き甲斐を持って働けないほ ど厳しい職場環境が、制度の見直しにより作られ ています。介護ビジネスへ民間はどんどん参入し ますが、国、大阪市の公的責任は放棄されていっ ているように思います。

理念に基づく一人一人が大事にされる介護を目指した取り組み

 私たちヘルスコープ田島診療所ケアプランセン ターふれあいでは、介護利用者へのサービスをど うするのかと見るだけでなく、生活全体を見て人 の尊厳に基づいた介護に取り組んでいます。その 指針となるのが「理念」です。私たちは基本的人 権を守りながら、介護を必要とする人が、慎重に 安全に、その人らしい暮らしの希望に寄り添える かを考え、介護サービスの提供に取り組んでいます。
 取り組みの一つに地域でのたまり場づくりがあ ります。たまり場の目的は助け合いの場作りです。 たまり場は生野区内で2カ所あり、生野商店街の中 にあるたまり場「だんらん」では、絵手紙づくり や俳句づくりをたまり場で行ない利用者に喜ばれ ています。
 例えば、B さん(81才)は「だんらん」の近く に住む要支援2の人です。「だんらん」が開設され たことで、体がしんどくなっている相談を受け介 護の申請をしました。今では絵手紙づくり教室に 定期的に参加され、絵手紙を楽しみながらリズム のある生活を送られています。
 毎日出会う、介護の現場は大変ですが、私たち は悪くされてきた介護保険を利用者さんと手を組 んで制度そのものを良くするよう運動を続けてい ます。

(2016年4月)


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