こども食堂を訪ねて
家族と一緒に十分な食事をとれないこどもが増えています。大阪府が家庭での食事に
ついて行った小中学生と保護者へのアンケート結果では、食費を切り詰めている家庭が 38%に上り、日常、親と一緒に食事をとれないこどもが 5%ほどいることが公表されました。十分な食事をとれないことが、こどもの体と心の成長を妨げています。その一方で、無料もしくは低額で栄養ある食事を取れる「こども食堂」が、全国で 600カ所、大阪市内で 30 数カ所開設されています。その一つ、テレビでも放映された大阪市西成区にある「にしなり☆こども食堂」を訪ね、代表の川辺康子さんから取り組みをお聞きしました。
西成区は生活保護世帯率 24%という突出した貧困地域です。現在、こども食堂は区の「にしなり隣保館スマイルゆ~とあい」で週 2 回開かれ、60 数人のこどもが利用しています。参加費は無料です。一回 6,000 円の国からの助成金と、お米、調味料など食料の寄付、料理、配膳、片付けを行うボランティアにより運営されています。
こども食堂の取り組みから見えてきたこと
川辺さんは、子育てネットワークでのボランティア活動を通じてこども食堂へと関わるようになりました。その後、社会福祉協議会で仕事をするようになると、ある時、お昼の時間になっても家に帰らず、ウォータークーラーの水を飲んでいる子に気づいた
そうです。尋ねると「水好きやねん」という返事でしたが、実は家に帰ってもご飯がなく、鍵が閉まっていました。川辺さんはその子にカップ麺など食べさせたりしたそうです。6 年前に西成区の「市民交流センターにしなり」に移ると、しんどいこどもと頻繁
に出会うようになりました。いつもイライラしてすぐ喧嘩する。言葉使いも「死ね」など平気で人に言うこどもたちです。背景に、家庭でお腹を空かしているこどもたちがいることを知りました。試行錯誤の末、こどもが自由にご飯を食べに来られる居場所が
あると良いのではと考え、こども食堂を始めました。当初「無料だとこどもをつけあがらせるだけや」などと言う人もあり、協力者が少ない中での出発でした。しんどいこどもや一緒にやってくる親についても、「傷ついて生きてきた人が多い。こども食堂は貧困の代名詞となっているがそれだけでない」と、川辺さんは話します。そして「こどもはこどもの中で育つ、地域の中で育つ」つまり、こども食堂は地域からこどもを育てる場と言う考えを持たれています。何より、こどものしんどさの大きな原因に「自分自身を認めてもらえない、自分を好きになれない自分がある」とも言われます。「自分を認めないと相手を認められない。自分が変わらないと人は変わらない」とも話されまし
た。そのため、こども食堂では、「ありがとう」の気持ちを伝えることに心がけていると言います。最後に、こども食堂にやって来るこどもたちの中から将来、地域で役立つ人が一人でも出てくれることを望みたいと話されました。