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2014/04/20

小規模企業振興基本法

Tweet ThisSend to Facebook | by kawahara
小規模企業振興基本法

ほんとうに小企業・零細企業の活性化につながるのか


 3月「小規模企業振興基本法案」が閣議決定され、今国会で成立が見込まれています。これまで中小企業の基本法としては「中小企業基本法」(1963年制定)がありましたが、中堅企業に政策上の焦点が当てられ、小規模企業むけの政策体系になっていない、既存の支援策も小企業にとって利用しやすいものになっていないということが指摘されていました。そうしたこともあり、「小企業のための基本法」は商工会など商工団体の要求もあり、自民党が一昨年の総選挙で公約としてかかげていました。

成長発展中心の「振興法」


 「小規模企業振興基本法」の基本は、成長発展型の振興で小企業の競争力強化をその中心においています。また基本法にうたわれている基本施策は①多様な需要に応じた商品、サービスの国内外での販路開拓、新規事業の促進、②創業、事業承継支援、③女性、青年などの人材育成、④地方公共団体など支援体制の整備、などとなっています。
 あわせて商工会、商工会議所による小規模事業者への経営支援を強化するための「小規模企業支援法(商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律)」の改正案も同時に閣議決定されています。

格差是正から「競争力」重視への流れ


 中小企業基本法は1999年に大幅に改正されました。改正の方向性は「大企業と中小企業の格差是正」「取引の公正化」という従来の観点をみなおし、「経営革新」「やる気のある中小企業支援」といった、いわゆる成長重視、競争力重視、ベンチャー重視への転換です。今回の「小規模企業振興基本法」も「事業の持続的発展」という現行の企業の存続を重視する文言は入っていますが、同様の「ベンチャー重視」「成長重視」の方向性といっていいでしょう。
 また安倍政権は「日本再興戦略」で、新事業を創出し、中小企業の開廃業率10% ( 現在はどちらも4 ~ 5%)を目指すことを打ち出していまが、これも同じ政策スタンスからでてきたものです。


下請法ガイドラインのみなおし


 3月に「下請法( 下請代金支払遅延防止法)」のガイドラインがみなおされました。これは企業間取引、とくに大企業と中小・下請の取引で問題になる点を具体的に指摘するためのもので、中小企業が大企業への納入価格に燃料費や原材料費の値上がり分を転嫁できるよう支援するものです。消費税転嫁法や今回のガイドラインの見直しなど、政府も現在の取引が大企業優位であることは認めており、その改善を一定指向しているわけです。
 中小企業、零細企業はこの数十年間、とくにデフレ経済下で非常な困難に直面してきました。競争の激化、下請など工賃の引き下げ、短納期化など取引条件の悪化はきりがないほどです。また、消費税は取引の力関係が如実にあらわれる税金であり、その増税は中小企業や下請企業にさらなるしわ寄せをもたらそうとしています。


不公正な取引から小企業をまもる施策を


 そうした状況のもと、「競争力」重視型で中小企業向け施策がおこなわれることに私たちは大きな危惧を感じています。関中協の経営実態アンケートでも頻繁な値引きや値下げ圧力にさらされながら企業存続に必死になっている会員の姿がうかびあがっています。
 「振興法」にあるような新規性、創業など「競争力」「発展」は企業活性化のために重要であることは否定しませんし、小規模企業への独自の振興法の必要性も理解します。しかし、いま苦しんでいる小企業、零細企業をどう守るか、実際には拡大している企業間格差やそれを背景にした不公正な取引の横行、こうしたことに実効性のある施策が求められています。とくに大企業の価格支配力に対する一定の規制が必要だと考えます。
 いま安倍内閣は「成長戦略」の一環として「成長の果実としての給与の引き上げ」を大企業各社に要請し、ある程度の賃上げは実現しています。しかし、企業数の99% 、従業者数の76% をしめる中小企業の状況の改善がないかぎり真の「成長」は望めないのではないでしょうか。
(2014/4)


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