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2015/01/20

格差拡大は中小企業の活力奪う

Tweet ThisSend to Facebook | by kawahara
経済展望

格差拡大は中小企業の活力奪う


アベノミクス解散


 昨年末、安倍首相は「アベノミクス解散」と名付けて解散を強行し、総選挙で与党は3分の2以上の議席を再び確保しました。大幅な金融緩和を中心とした経済政策がおこなわれて約2年が経ちました。この間、株価は上がり、円安効果によって輸出大企業は大もうけをしました。しかし、食料品など輸入品は円安により値上がりし、消費税増税もあって消費は大幅に減退しました。
 アベノミクスの眼目は「大企業や金持ちなど富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウン)する」というものです。しかし、この間たしかに「富める者はさらに富みました」が、「貧しき者はさらに貧しく」なりました。上場企業の2014年度上半期(4~9月)の利益は14兆3000億円になり、過去最高を記録しました。しかも半分の7兆円はトヨタ自動車など全体の2%程度にすぎない上位30社が占めています。一方内閣府などの発表によると、2014年度の中小企業の景況感は3期連続で悪化し、しかも「下降」企業の割合が増えています。また、実質賃金は昨年10月まで16ヶ月連続でマイナスです。


逆トリクルダウン


 現在進行している大企業と中小企業、あるいは金持ちと労働者という格差の拡大は、実は1990年代以降のグローバル化がすすむ中で進行してきました。日本では2002年からリーマンショックの2007年までつづいた景気拡大期は「実感なき経済成長」といわれましたが、その中身は大企業を中心とした企業業績の回復と中小企業の不振で、大企業の雇用は上向いたものの、雇用の7割をしめる中小企業の改善は見られませんでした。その結果、GDP など好調な経済指標と生活実感に大きなかい離が生じたのです。そして多くの中小企業は、生産の海外移転、国際競争力を名目とした単価の引き下げ、競争の激化に苦しみました。この時期以降、開業率と廃業率が逆転し現在にいたっています。
 この間うかびあがってきたことは、中小企業の利益、労働者の賃金が低く抑えられ、つまりコスト抑制によって大企業が利益をあげるという図式でした。アベノミクスのいう「トリクルダウン」とはまったく逆の図式が進行していたのです。

再配分機能の回復を


 安倍内閣は法人税の減税を打ち出しています。その減税分は中小企業や国民には還元されず、むしろ格差の拡大を今以上にもたらすことになります。
 日本の潜在成長率はゼロ%前後だといわれています。大企業や金持ちに富が集中し、国民の大多数が貧しくなる、中小企業の経営が苦しくなる、この富の偏在こそが正常な経済成長を阻害する最大の要因ではないでしょうか。
 いま必要なのは、所得など富の「再配分」を強化することです。税や社会保障制度がもつ再配分機能の強化、消費税の増税ではなく累進的な税制、社会保険制度の再構築です。同時に中小企業の活力の再生が必要です。下請関連法、独占禁止法の運用強化などによる下請工賃などの引き下げに対する抑制措置の強化です。また、昨年は小規模企業振興法が制定されましたが、中小・零細企業自身の努力や活力を生かし、地域経済を再生するとりくみがもとめられています。

(2015年1月)


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